各通貨ペアのボラティリティの時系列変化

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バックテストを実行しながらEAの実行パラメータを調整していく過程で、ナンピン幅、初期ロット、逆指値幅といったトレードリスクの大きさに影響を与える要素について、どのように設定すれば良いか悩むとところだ思います。

今回は、過去のレートの振れ幅がどの程度であったのかを知ることで、上記の判断の目安にして頂ければと思います。

ちなみにドル円をトレード対象にしている方は多いと思いますが、
2019年のドル円の値動きは荒かったでしょうか?それとも穏やかだったでしょうか?
ご自身の体感も踏まえながら、以下をご覧頂くとイメージが湧きやすいかと思います。

データ準備

まずは分析対象のデータを収集します。
以前の記事でデータ収集自動化の記事を書いたことがありますが、今回はXM社のMT5配信レートを自動収集しました。

・通貨ペア:主要8通貨の組み合わせ = 28通貨ペア(8 x 7 / 2)
・期間  :約11年間分(2009/1/1~2019/12/31)
・足   :1分足

という条件で、約110,000,000件(1億1千万件)程度のレコードを集計します。

MT5 の配信レートにはスプレッド情報も記録されるようになり、MT4と比べて優秀です。
かつ、直近のMT5バージョンアップでpython スクリプトからMT5レートへのアクセスが可能になったことから、レート取得自動化がやり易くなりました。

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ビジュアル化ツール

今回も Tableau Desktopを使用しました。
集計パターンにもよりますが、1億件くらいのデータセットならコンマ数秒のオーダーで集計結果を返してくれます。

大きなデータセットでも集中力を切らさずにデータと対話することが出来てオススメです。

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年間の値動き

ようやく本題。

A : 各通貨ペアのローソク足高値の年間最大値
B : 各通貨ペアのローソク足安値の年間最小値

を取得し、 A - B がいくらであったのかをまとめました。
集計範囲は年度なので 各年の1/1~12/31 区切り。数値は pips です。

ドル円(USDJPY) の2019年は表の右下隅の部分で、 784pips (=7円84銭)という結果でした。

これが荒かったのか、穏やかだったのかを判断するために、いくつかの値としてみます。

ドル円の2018年以前との比較

784pips という値は、年間ベースで見た場合、過去11年で最も小さい値でした。
つまり、去年のドル円の値動きは非常に穏やかだった ということになります。

2019年初のフラッシュ・クラッシュのような印象的な出来事もありましたが、最高値/最安値だけを見ると流動性が低かったということになります。

2019年の他の通貨ペアとの比較

上のクロス集計表だけだと分かりづらいので、 ラインチャートと組み合わせ、ハイライト連動しました。

ラインチャート、右端の部分が2019年のデータになりますが、ハイライトされているドル円の値幅は
他の通貨ペアと比較すると下の方に位置しています。

尚、自動売買の対象とする通貨ペアの選定に際しては、単にレートの変動幅だけでなくスプレッドも収支に大きく影響しますので、これはまた別の機会にレポーティングしたいと思います。

移動計算で評価した場合

前述の集計結果は年度別(1/1~12/31 までの12ヶ月)で評価した場合の結果でしたが、
実際のトレードで影響するのはポジションを保有してから決済するまでの期間です。

ナンピンの場合、初回ポジションを保有してからナンピンを重ね、全決済に至るまでの期間におけるレート幅がどの程度変動したか、の方が重要な指標となりますので、次は過去○ヶ月間のような移動計算をしてみます。

まずは12ヶ月で移動計算した結果。 当月+過去11ヶ月の12ヶ月分のレートから、最大値と最小値を移動計算で取得し、差分を取った結果です。
※2009年付近は過去12ヶ月分のデータが無いため、
2009/1の場合は当月のみ、2009/2の場合は2009/1~2009/2の2ヶ月間… という期間における最大値/最小値を使用しています

年度別グラフと比較的近い曲線ではありますが、変化が細かくなりました。

この移動計算の期間(月数)を段階的に狭くしていくと。

 

上の画像のような結果になりました。移動計算を1ヶ月間(月初~月末)とした場合、

・最もレートが動いたのは    2016/11(1,261pips = 12円61銭)
・最もレートが動かなかったのは 2019/12(   129pips =   1円29銭)

という結果になりました。

同じ1ヶ月間でも約10倍のレート変動が起きていることがわかります。
ちなみに2016/11は米国大統領選挙でトランプ大統領が勝利したタイミング。
株高、ドル高が一気に進んだようです。

2017年以降、月間で見た場合のレート幅はかなり穏やかな方にみえますが、
それでも4~5円程度の変動が起こっている箇所があることが確認できます。

短期的にこの値幅で動くことを理解した上で、自身の資金量と相談しながらロットの大きさ、損切りライン等をどうすべきか考えていく必要があります。

まとめ

ドル円に関し、長期的な傾向としてはドル円のレート変動幅が狭くなっていること、
しかし短期的は数円オーダーで変動する機会もあることが読み取れたと思います。

自動売買ツールを使用する場合でも、パラメータの設定でロット数やナンピン幅、損切りライン等を調整することができます。
このパラメータの与え方によって同じツールでも挙動は大きく変わりますので、パラメータを色々変えながらバックテストを繰り返し、ご自身のトレードスタイルとして納得できるものを検討してみてください。

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